難民申請の「働けない矛盾」を正す
私は行政書士として、難民申請や在留資格に関する相談を日常的に受けています。
そのなかで感じるのは、いまの日本における「外国人問題」は、人の側の課題と制度の側の課題が絡み合っているということです。どちらか一方を責めるのではなく、両方を見据えた現実的な対処が必要だと考えています。
最近対応した相談の一例では、短期滞在で入国した後に難民申請を行い、現在「特定活動(難民申請中)」で滞在している方がいました。本人の希望は「帰国せず、このまま日本で就労ビザに変更したい」というものでした。難民申請中に就労系の在留資格へ変更するのは現行運用では非常に難しいため、その希望を実現するハードルが高いというのが実情です。
もちろん、すべての申請が悪意に基づくわけではありません。実際に危険な状況から逃れてきた方も確かにいます。ですが一方で、「働くため」「生活基盤を築くため」に申請を検討するケースも増えているのが現場の実感です。制度の運用が現実に追いついていないため、正規の手続きを踏めないまま不安定な状態に置かれる人が出ていることも事実です。
この状況を放置すると、本当に保護すべき人が疑われるようになり、制度全体の信頼が損なわれます。長期化した審査期間が「滞在を延ばす手段」として機能してしまうと、制度の目的がぼやけてしまいます。
そこで私は、現場目線で次の二点を優先的に実行すべきだと考えます。
まず一つ目は、審査を迅速化することです。審査期間を短くすることで、命の危険がある人には早く保護を与え、そうでない人には速やかに適切な対応を示すことができます。審査のスピードは公平性を担保するうえで基本です。
二つ目は、結果を待つ間に働ける仕組みを整えることです。働く機会を一定条件で認めることで、本人が合法的に生活を保ち、自立を目指せるようにすることが重要です。働けないことを前提に放置する運用は、違法就労を誘発し、社会的コストを高めます。
ただし「働ける仕組み」を導入する場合、悪用を防ぐための管理・監視を同時に整備しなければなりません。具体的には、以下のようなセットが現実的だと考えます。
- 申請から一定の経過期間や要件を満たした場合に限定した条件付き就労の許可を設けること。
- 雇用主に対する届け出や報告義務を課し、雇用の透明化を図ること。
- 定期的な状況確認や第三者(支援団体・専門家)によるチェックを導入すること。
- 違反が確認された場合に迅速に措置(就労停止・在留資格の見直し)を取るルールを明確にすること。
重要なのは、「働ける=無条件に緩める」ことではなく、「働けるがルールを守らなければ即座に取消される」という明確さを制度に持たせることです。そうすることで、正当に働きたい人を守りつつ、不正利用を抑制できます。
最後に申し上げたいのは、外国人の行動だけを問題視するのではなく、制度設計そのものを見直す視点が不可欠だということです。制度が現実に合っていなければ、誠実に生きようとする人が損をし、不正が生まれやすくなります。審査の迅速化と申請中の就労管理という二つの改善は、現場の実感と社会の安定の双方に資する現実的な方策です。

